lapin noir

Diary / Photographer / Sapporo

逃げない鳥

 自宅の駐車場で私を迎えてくれる「かわいこちゃん」がいる。
 車の乗り降りの際に来てくれて、会う度に「かわいこちゃん、こんにちわ」と何度も言うようになった。「かわいこちゃん」とは、私の駐車スペースの屋根にいるハクセキレイのことで、初めて見たのは公園だった。数年前、野鳥撮影をしていた時に「よく歩く鳥だな」と思ったのが第一印象で、鳥なのに園路をご機嫌な様子で歩いているのが微笑ましかった。今も車を発進させる時、前方の地面をちょこまかと歩き回り、逃げないので轢いてしまうのではないかと気が気でない。

 今日は昼過ぎにゴミ出しのために畳んだダンボールを左脇に抱え、40-150proレンズをつけたカメラを右肩にかけて外へ出た。
 行くと姿はなく、鳴き声も聞こえない。それでもとりあえず車へ近づいてみると、丁度いいタイミングで屋根から降りて迎えてくれた。鳥運があってよかった。

 私はまた「かわいこちゃん、こんにちわ」と言った。

 被写体となって鳴き声を聞かせてくれると、間もなくもう一羽が登場。暫く遊んでくれた。オスとメスの違いが分かりにくいが、多分つがいじゃないだろうか。驚いたのは、望遠を構えた私の斜め頭上でホバリングまで見せたことだった。「撮ってごらんよ」と弄ばれている感じさえしたが、人から貰う餌を食べるわけじゃないし、どういう意味があるんだろう。でも残念ながらその瞬間をとらえる用意はなく、ピンを合わせられなかった。逆光ぎみの方向から、水色の空を背景に私を見下ろすハクセキレイのシルエットは、撮れなかった印象的なシーンとしてこれからも頭の中でリピートされていく。

 地味な色の羽毛で華やかさには欠けるが、住宅や駐車場の側にいることが多くて人懐っこい。何年も前から自宅周辺にいるので、代々遊びに来てくれているんだろう。「かわいこちゃん、こんにちわ」と、いつまでも言い続けられる環境であってほしい。



2020.8.2 記