lapin noir

Diary / Photographer / Sapporo

'29 12 31

 「9年後、どうなっていたい?」

 私は唐突にある友人へメールした。返信は想像と違って意外で笑ってしまったけれど、思い返せば写真に対して、私も似たような憧れをどこかで抱いているのかもしれない。ただ、この憧れというのは厄介で時折悩みのもとになったりする。年を重ねて、そうそういい事なんかない。やりたいことが好きなだけ出来るうちはいい。日々に追われ、例え時間が出来たとしても無理をしてまで出来なくなってくる。それでも現実に飲み込まれることなく、雪の結晶を見て「天から落ちてきた星」と表現した谷川俊太郎の一節のような、冬の太陽に照らされ落ちる雪の煌きみたいなものを持てていたら、それはとっても素敵だろうと思った。返信は「キラキラしていたい」だった。

 なぜ9年後の話をしたかというと、コンパクトフィルムカメラのデート機能のことだ。最近、Autoboyで撮った数年前の写真をinstagramに投稿していて、写真の右下に入るオレンジ色の日付がいいなと思っていた。XAに入れたフィルムが撮り残したままなのを覚えていたので棚から出し、一緒に置いてあるAutoboyも懐かしくなって電池交換した。このAutoboyは押せば簡単に写るので面白みに欠け、ポケットに入る小さなXAより出番はない。カラーフィルムを入れ、説明書を見るとデート機能は2029年12月31日までと記載されていたのだ。日付設定をしなくてもカメラ本体が壊れなければずっと使えるが、写真に日付を表示できるのは、この日まで。

 「9年後かあ・・・」と酷く嫌になった。どうなっているんだろう、何しているんだろうと。

 複数の友人や知人との約束ならまだしも、基本的に2週間先の予定を入れるのも嫌いな私が、1年後のギャラリーの予約をするとか、9年先を見ることなんて簡単に出来ない。それでも新型コロナの影響で、今までよりも1年先や月単位で考えたり、振り返ることが多くなった。今さえ良ければいいという刹那的なものではなく、単純に苦手なのだからどうしようもないし、そうやって生きてきた。まあ、その通りの人生と言えばそうだが、そんなに悪いとも思っていない。

 日付設定をした途端、9年後がやけにリアルに感じられてきた。何十年も先じゃなく、遠くはない先のこと。でも、9年先を嫌だなと思ったモードは、人と言葉を交わすことで、ごく自然に簡単に切り替わってしまうから不思議だ。

 ほんの少し前へ。そう遠くはない先の未来へ。

 

 

2020.7.20 記