lapin noir

Diary / Photographer / Sapporo

乗車扉のフレーム

 会社から路線バスに乗って帰るときは、乗車口の向かい側の席に座ることが多い。途中で止まるバス停の奥には築古マンションがあり、その鉄柵との間に赤い薔薇が咲いている。一階にある引き違いの腰高窓を覆い隠すような背の高さだ。
 今までは後ろの席から何となく視界に入っていた程度だったのが、見ているうちに段々気になってきて真正面から見えるその席を選ぶようになった。そして座るたび、乗車扉というフレームの中央に薔薇を配置させる運転手さんの停止位置の正確さには思わず失笑してしまう。
 バスに人が乗り込んだ後、扉越しの風景をスマホで写真に収めようとしたものの、人目を気にしてタイミングを逃してしまった。西日は当たっていないし、距離も足りない。改めて車窓に目をやると日は暮れていた。「まあいいかな」と撮る必要がない理由を並べて、いつもと同じように納得する。
 「いまいちだな」と思いながらシャッターを押す行為は空しい。でも、なかなかこの癖が抜けない。なるべく反応したものはストックしておきたいという気持ちからだが、なんなんだろう?確かめたいのか?「やっぱりそうだよね」「だめだよね」と安心したいのか?
 そんなことは意識したことがないからわからないが、いま書いていたら、そんな気がしてきた。